夢が叶ったその先に

この記事は、「アカペラアドベントカレンダー2020」の23日目の記事です。

アカペラアドベントカレンダー2020 URL https://media.acappeller.jp/feature/8105/

 

 

ご挨拶

皆様お久しぶりですくぼちさです。

去年に引き続き、今年もこの企画に参戦します。

さて、前回私はこんな記事を書きました。

https://kacappella.hatenablog.com/entry/20191223/1577102407

また記事を書こうと思ったきっかけでもあるのでぜひ読んでおいていただけると嬉しいです。

ネタバレすると、ソラマチアカペラストリート(以下ソラスト)に出たいという熱をただ書き殴っただけの文章ですが、あのあと思ったより反響があり、共感や応援の声をいただきまして。その後の話を今回書こうと思います。

 

 

対面で歌えなくなったことで密かに感じていた得体の知れない焦り

まあもう敢えてこの場で言うことでもありませんが、ご存知の通り2020年は世の中が大きく変わった年です。アカペラも例外ではなく、ライブは中止になり、バンドでのスタジオ練習からサークルの全体会など何から何まで集まって歌うことが制限され、モチベーションを見失った人も多いと思います。私もその1人で、それでも歌うことが好きな気持ちは忘れてはいけないと今まで手をつけて来なかった多録をやってみたりリモートアカペラの企画に混ぜてもらったり、色々やりました。

おかげで自分の歌と向き合う時間は今までより増えた、でも何かが違う。かと言って何が正解かも分からない。そんな悶々とした数ヶ月ののち、Twitter上でとある情報が目に入って来ました。

 

最後の賭け

「ソラスト2020エントリー要項公開」

正直迷いはありました。現状オンラインでも動いてるバンドはない、ステージ経験もそんなにない私に過去動画のストックなんかもっとない、リモートでやっても上手く行くか分からない、そもそもまだ先とはいえこんな情勢の中でほんとにやるのかも分からない…未知数なことだらけでまたダメなのではとも思いましたが、一周回ってもうどうにでもなれと開き直りまずは自分でバンドメンバーを募集し始めました。

実は去年にはアカペラを頑張ることに割と限界を感じていて、そろそろ引き際かもしれない、2019年から数えてあと3年頑張って何も成果が出なかったら表に出るのは終わりにしようと決めていた矢先。根拠もなくこれがラストチャンスだと直感で思った私は、同じくソラストエントリー用に募集していた別のバンドにも乗っかり、計2バンドでのエントリーを決めました。今年はこんな状況だしどちらかでも通れば御の字、それくらいの気持ちでした。

 

まさかの通過

そして10月の結果発表。

エントリーした2バンドのうち、なんと片方が通過しました。見事に去年のフラグ回収。職場のデスクでお昼を食べながら悲鳴上げそうになったのを覚えています。

冗談抜きで3度見したのちに泣きました。もちろん嬉しい方の意味で。そりゃだって大学4年の時から憧れ続けた舞台ですよ。周りの知り合いが通るたびにどれだけ悔しい思いをして来たか。まあできれば両方通りたかったのが本音ではありますが贅沢は言いません。それからはグループ通話での打ち合わせとリモート音源の作成、楽譜と擦り合わせながら復習を繰り返し、2曲目も決まり着実に準備を進めて行きました。

 

アレンジャーとしてのこだわり

ここからはアレンジの話。

今回披露した2曲は「証/flumpool」と「糸/中島みゆき(EXILE ATSUSHIカバーver)」。エントリー時は証の楽譜がすでに出来上がっていて、2曲目が決まった時にはもう自分で楽譜を書きたいと思っていました。2年ほど前に本腰を入れてアレンジの勉強を始めて、いよいよ力試しをする時が来たと感じました。

 

当日の演奏動画がこちら

証→https://youtu.be/RIBM7erpwl0

糸→https://youtu.be/fum_WkPXT6M

 

まずリードに合うキーとしてEXILE ATSUSHIのカバーを元に、原曲を1週間ほどかけて聞き込み、大まかに雰囲気を把握したころにリードの採譜を開始。元々が馴染みのあるシンプルな曲なので、その空気感を壊さないようにしつつ他のバンドにはできないようなアレンジにしたいと思い、慎重に構成を考えました。まず思いついたのがイントロから1番Bメロにかけてのリード回し。せっかくソラストで歌うのであれば、メンバー1人ずつ(あわよくば自分も)目立つ場所を作りたいという気持ちがあり、キリのいいワンフレーズごとにリードを割り振りました。サビは敢えてシンプルにして、そのままの雰囲気で2番に行くと面白くないので2番に入ったところで突然スイングに。ジャズっぽさはありつつも緩やかに軽く流れるようなリズムを作り出しました。2番サビに入ると元のリズムに戻り、最後の転調へと繋げて、転調後のラスサビは敢えて静かなコーラスから始めて2回目の「会うべき糸に〜」を一番盛り上げたかったのでそこに向けてラスサビのコーラスは全体的に解放感を出すようにしました。最後は余韻を持たせて静かに。この終わり方はプロアカペラグループINSPiがカバーした「海の声」の動画を参考にしました。INSPiカバーの海の声は大学卒業して最初にライブで歌った曲で思い入れもあったので、糸のアレンジをすると決まった時にどこかで取り入れたいと思っていました。やりたいことを思いつく限り詰め込んだ楽譜にはなりましたが、個人的には過去最高のアレンジができたかなと思っています。

 

本番にて

そして当日。

私のバンドは2日目にソラマチひろばで歌うことになっていました。ソラスト自体は5回目でもう慣れてるというのに朝一で会場確認に行って、待機の時間まではお目当てのバンドを周りつつ終始そわそわして落ち着くことができなかったのを覚えています。

今だから正直にぶっちゃけますが、演奏中の記憶はほとんど残っていません笑。緊張で足が震えて、とにかく下を向かないように必死でした。ただ4年間憧れ続けたステージからの景色は想像していたよりずっと大きくて、そんな場所に立てている喜びを噛み締めながら歌っていました。演奏が終わってステージから降りた瞬間完全に腑抜けてしまい、しばらく呆然としていました。色んな人が見に来てくれてて、そうでなくても付き合いの長い人ほど「よかったね」って言ってくれて。それだけで胸がいっぱいになりました。それくらい本気だった。全て終わった安心感と、感動と、感謝と、色んな感情が入り混じった忘れられない一日となりました。

 

確かな手応え

さて、先ほどそろそろアカペラ頑張るのも終わりか…みたいな話をしましたが、前言撤回。

これまでの4年間を振り返って感じました。

まだまだ終われない、むしろここからが本当のスタートラインだと。

 

大学時代に思うようにアカペラを楽しめなかったのが心に引っかかっていて、卒業してもなお足掻いてやっと掴んだ夢。しかし大会にもロクに出た経験もない私が、今回ソラストに出れたのはほぼ奇跡のようなもの。知り合いに聞いても8割は知らないって言われるような小さなサークルから出て来て、周りの同年代の人と比べたらかなり出遅れている自覚はあります。ただ出遅れてるなら出遅れてるなりに頑張ればいい、実力が足りないなら磨けばいい、今回のソラストを経てそう思うようになりました。

また挫折しそうになる時が来るかもしれない、アカペラそのものが嫌になることもあるかもしれない。でも私には4年越しの夢を叶えた事実がある、そう思ったら根拠もなく自信を持てるようになったのです。もう周りを羨ましがって見ているだけだった過去の卑屈な自分とは違う。密かに次の大きな目標もできたし(これについてはまたどこかでお話できればいいなと思っています)、今後も何があっても喰らい付いて行ってやろうという気持ちです。最後までお付き合いいただきありがとうございました。